そば処瓢箪@市ヶ谷の咽る牛丼 - 東京立ち食いそば

瓢箪のボトムズ牛丼

2019年10月に市ヶ谷の瓢箪で牛丼を食べた。480円である。

瓢箪の牛丼はこま切れか切り落としかの牛肉を煮込んだ牛丼で、万能ねぎと紅生姜がのせられていた。紅生姜は真紅に染められたものだ。スープがつく。

瓢箪の牛丼は咽る牛丼だ。言葉を飾らずに直球で言えば、くどい牛丼だ。牛の脂が原因のような気がする。食べ進めるうちに、しつこくなってくるのだ。濃厚な味わいだ。戦場だ。咽る。牛肉の部位は大手チェーン店とは明らかに異なる。吉野家系列の廉価な牛丼チェーン店として池袋西口に牛丼牛若丸があるが、牛肉の食感が似ている。似ているのだが、牛若丸の牛肉は食べやすく、瓢箪の牛肉は咽る。やはり脂が関係しているような気がしてならない。

瓢箪の牛丼にトッピングされた万能ねぎと紅生姜がありがたい。咽る牛脂に清涼感を与えてくれる。特に紅生姜だ。少しずつ牛丼とあわせて食べ進めていくことで、食べ安さが確実に増す。レッドの力は計り知れない。

2019年10月1日の消費税増税にあわせて値上げしたようだ。消費増税以前は牛丼が460円で、ミニ牛丼が230円だった。消費増税以後は牛丼が480円で、ミニ牛丼が240円になった。牛丼チェーン店との価格差が大きくなったことで牛丼は注文しづらいメニューになってしまった。牛丼480円はやっぱり高い。牛丼チェーン店が安過ぎるのかもしれないが、比べれば、どうしても割高に思えてしまう。最低野郎と罵られても、やっぱり安さは正義だ。食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。牙を持たぬ者は生きてゆかれぬのが現実だ。価格には敏感でいなければならない。

瓢箪の咽る牛丼は神である。唯一絶対の存在であり、他に代替がない。美味いか不味いかという二択では後者になるが、もう一度食べたいか食べたくないかという二択では前者になる。おそらく中毒性のある味わいなのだ。一度食べて地獄を見ても、二度三度と通ってしまうと、いつのまにか不味いが美味いに変わってしまうということなのではないかと推測する。そして通ってしまうのだ。それがさだめとあれば心を決めるしかない。

瓢箪の牛丼に添えられるスープ

瓢箪の牛丼にはワカメと白ネギが具材のスープが添えられている。汁物の正体はそばつゆだ。色が黒い。一口啜る。塩辛い。驚いた。出汁感はあるが、それを上回る位の第一印象が塩辛いだった。このつゆが、かけそばに使われているのだろうか。牛丼のお供の汁物として、そばつゆがある。牛丼を食べ進める中で、当然、汁物は一緒にいただく。最後は飲み干す。飲み尽くすことが前提の汁物なのだが、それにしては塩気がガツンと効き過ぎている。

かけそばのつゆだったら衝撃的だ。かけそばのつゆは残しても問題ないはずだが、それでも、かけそばといえば、つゆであって、その出汁を堪能するために、かけそばを注文している方もいるはずだ。自分はかけそば初心者である。従来までは、冷たいそば以外は注文すべきではないと声高に書き続けていた時期もあった。硝煙の香りがする。戦場だ。最近になって、齢を重ねてきたこともあるのだろうか、姿勢が柔軟になり、かけそばも悪くはないではないか、かけそばはそばそれ自体を楽しむと言うよりも、つゆの出汁感を楽しむのに悪くないメニューなのだと考えられるように変化してきていた。そこに現れたのが、市ヶ谷の瓢箪の牛丼に添えられるスープだった。

牛丼に添えられたスープは、間違いなくそばつゆがベースとなっているはずだ。とういうことは、かけそばは極めて先鋭的にしょっぱさが突出したつゆになっているはずだ。興味津々である。ウェブを検索すると、それなりの声は上がっていたが、あくまでもそれなりであって、盛り上がりは少なかった。瓢箪のかけそばのつゆは許容範囲内らしい。関西の透明な出汁のつゆと違って、関東では黒いつゆが伝統的だ。瓢箪はあくまでも一般的には許容範囲内であって、美味いそばつゆなのだ。……そんな訳があるはずない。俺が飲む瓢箪のスープは辛い。塩気がガツンと効きすぎているよ。地獄を見たよ。きっと瓢箪でかけそばは注文してはいけない。個人的には神に誓って絶対だ。

しかし、牛丼に添えられたスープとしては許容範囲内であるかもしれない。咽る牛丼の味を引き締めるのに抜群の効果がある。このスープがあっての、あの牛丼なのだ。組合せの妙である。癖になる組合せかもしれない。再び食べたくなって、いつのまにか慣れてきてしまって、繰り返し注文するようになってしまう。そんなことさえ想定できてしまう。危険である。

瓢箪の咽る牛丼としょっぱいスープは他で味わうことができない絶妙なセットである。ぜひ生涯に一度は体験していただきたい。きっとその価値はある。他の店の牛丼も続けてどうぞ。

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作者:馬場飯