白い夜空のヒカリ - 高田馬場B級グルメ

ホワイトアウトだ。雪煙で視界が遮られる。

仲間は捨てた。いや、俺が捨てられたのか。もうどちらだっていい。

いい奴らだった。ただ、ちょっとだけ俺たちは不運だった。小屋を出るのが1時間だけ早すぎた。

出発を切り出したのは俺だったのかな。きっと俺が全ての元凶だったのかもしれない。

いずれにせよ、奴らとはまた直ぐに会えそうだ。こちらで再会できるのか、あちらで再会することになるのか、後者になりそうなのが残念でならない。

仲間たちはもう見えない。凍りついた睫毛の奥から見える世界は白一色だ。だが、今はもう何も見える必要がない。白一色で何も見えない。今は前に進み続けられればいい。

手の指先も足先も感覚がない。生きて帰れても切断するほかない。とても残念だ。が、考えても仕方がない。生きて帰れるはずがないのだ。

顔から何かがぶら下がっている。血らしい。鼻やら口やらから垂れた粘液が凍って、唇だかどこかは切れているらしい。ただただ、鬱陶しい。払いのける気力さえない。

本当にもうどうだっていいや、とは思う。全てが痛くて、とにかく疲れ果てていて、何もかも投げ出したくなる。しかし、まだ歩けてしまっている。

もう終わりにしても許されるんじゃなかろうか。身体が重すぎる。全てが辛すぎる。

思い返せば、楽しいことばかりだった。

親友とツルンで遊んでばかりいた。ワイン瓶を片手に酩酊しながら夜の街を彷徨った。ひたすら面白可笑しく大笑いしていた。将来の不安をどこかに感じてはいたものの、時間は存分にあって、その大部分を笑い転げて暮らしていた。

初恋の彼女とは色々あったが、結婚した。間違いだらけの人生のなかで、唯一、間違えなかったのが、彼女に惹かれて、彼女を大好きになって、彼女と一緒になれたことだった。彼女を大切に想っているし、彼女の笑顔が生き甲斐だ。彼女を愛している、彼女を愛せて幸せだった、とか言ってもバチは当たらないだろう。

子どもは二人だ。もう少し大きくなるのを見たかったかもしれない。チビのほうは……これから……

畜生!ここでくたばるのか!

倒れた。雪に埋もれる。張り詰めた緊張の糸が切られた。力が入らない。雪に埋もれて動けない。力が全く入らなくなってしまっているのだ。痛いとか辛いとかではない。もうピクリとも動けなくなってしまっている。

まだ歩けるに違いないはずだ。力を振り絞る。

立てない。仰向けに転倒する。完璧に力が抜けていく。諦めていないのに、諦めきれていないのに、気力が消えていく。もう立ち上がれないのかもしれない。力が入らない。これで本当に終わりになるのか。身体中が痛くて、辛くて、泣き叫びたいのに、それすらもできない。涙は出ないが、何だか泣けてきた。あと少し、何かを諦めると、意識がなくなる気がする。そしてそれを諦めると、全てが終わりになる気がする。

空が見えた。

……見えるはずのないものが見えた。

雪の舞う空に光がある。

北極星だった。

忘れかけていた。

でも、忘れられなかった。

ポラリスだ。スーパーラーメン背脂専門だ。

390円だ。さあ、涙を拭え。立ち上がれ。食え。

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作者:馬場飯