雑司が谷のターキーと高円寺の七面鳥 - 高田馬場B級グルメ

戦前の新宿に七面鳥というラーメン店があった。多分、七面鳥店主の子どもたちだろう。二人の姉弟がいた。姉は戦後の1955年に成城で、弟は1959年に高円寺で、各々、七面鳥を開業した。

姉の成城の七面鳥は、1966年に成城大飯店、1989年に成城飯店、2015年4月1日には成城餃子と店名を変更しつつも、世田谷区成城6-8-1で営業を継続している。

成城の七面鳥から暖簾分けされた千歳船橋の中華料理 七面鳥は、2013-2014年頃に閉店となった。世田谷区桜丘2-29-16で営業をしていた。

弟の高円寺の七面鳥は、現在も七面鳥として営業を続けており、厨房は二代目、接客は三代目が担当している。場所は杉並区高円寺南4-4-15だ。高円寺の七面鳥は、七面鳥の名を守り続ける最後の七面鳥だ。

だが、以上の流れとは全く無関係に、新宿の七面鳥の魂は雑司が谷で受け継がれていた。

中華そば ターキー

中華そば ターキーのラーメン

中華そばターキーは1975年に雑司が谷で甲立一雄氏が創業した。場所は豊島区雑司が谷1-24-2だ。

新宿の七面鳥に肖って店名をターキーにしたらしい。七面鳥に弟子入りしたわけではなく、もちろん暖簾分けしてもらったのでもない。独力での開業だったようだ。

2016年11月にターキーでラーメンを食べた。550円だ。

ターキーのラーメンは典型的な東京ラーメンだ。麺はやや縮れのあるストレートな中細麺で、少し柔らかめの茹で加減だ。悪くない。スープは鶏がら、もみじ、野菜に豚骨が出汁で、カエシが醤油ダレの清湯スープだ。表面にはうっすらと鶏がら、豚骨から出た脂が浮く。美味い。具は、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、白ネギだ。チャーシューは大きくないが、厚みのあるバラ肉で赤身が7で脂身が3の割合だろうか。味が染みていて食べごたえがある。具材の主役だ。美味い。メンマは食感がよく、ほうれん草もさっぱりと箸休めに丁度いい。

やっぱりターキーのラーメンこそ典型的な東京ラーメンなのかもしれない。店主は新宿の七面鳥のラーメンの味を追い求めて、現在のターキーのラーメンに至った。この味こそが昔ながらの中華そばの味のはずなのだ。

仮に、より典型的な東京ラーメンを追い求めるならば、麺はもっと手もみを加えた縮れ麺を選んだほうがいい。スープについては、煮干しなどは少しだけ変化球なので、現状のターキーのままでいい。具材は何も言うことがない。現状のターキーこそがベストだ。特にほうれん草が素晴らしい。弱点は、手もみの縮れ麺ではないという点だけといっても過言ではない。

ターキー以上に東京ラーメンらしいラーメンを知らない。少なくともターキーより美味いラーメンで、ターキーよりも東京ラーメンらしいラーメンを知らない。現時点で、自分にとってはターキーのラーメンこそ典型的な東京ラーメンだ。とはいうものの、もし出汁が煮干しのスープの昔ながらの東京ラーメンをご所望ならば、ターキーから目白の坂を下って早稲田に向かっていただきたい。1958年創業のメルシーのラーメンが早稲田であなたを待っているからだ。

ターキーの接客は欧米か?

日本では当たり前の接客が、欧米では当たり前の接客ではない。日本は画一的だ。来客したら、いらっしゃいませと挨拶をする。欧米は個別的だ。来客したら、ようこそ、ボブ、今日は何する?といった具合だ。

ターキーの立地条件は、極論すれば、陸の孤島だ。ターキー周辺の道路を歩くのは周辺住民だけだ。道路は複雑に入り組んでおり、最寄り駅も遠い。周辺住民以外がターキーに辿り着くのは極めて困難だ。ターキーの客は二極化する。ほとんどが周辺住民で、残りはターキーの噂を知った他所者になる。リピーターは周辺住民だけだ。他所者は一見客となる。交通アクセスが極めて不便なのだ。気軽に再訪はできない。

そういう立地で、ターキーは1975年から営業を続けている。画一的で無難なマニュアル化された接客は悪影響しか及ぼさない。ターキーで必要なのは、日本的な接客ではなく、むしろ欧米的な接客だったのだ。その接客があってこそはじめて長期間に及んで営業ができてきたのだ。ターキーに訪問して、何か不快な接客を受けたとしたら、この事情を思い出していただきたい。その接客はターキーにとって存続するのに必須条件だったのだ。そして、願わくば、不快な気持ちは軽減できないかもしれないが、ターキーが生き残るためにはやむを得なかったのだとその背景だけは知っていただきたい。

高円寺の七面鳥の野菜炒め

2016年12月に高円寺の七面鳥で野菜炒めライスを食べた。550円だ。

今回が初訪である。店の前を通り過ぎたことは何回かあったが、今まで入店することはなかった。入店のきっかけは前月に訪問した雑司が谷のターキーとのつながりにある。ぜひ高円寺の七面鳥でも食事をしてみたかった。

七面鳥の野菜炒めライスは、ご飯と味噌汁、漬物、野菜炒めのセットだった。野菜炒めに肉は入っていない。肉野菜炒めライスがメニューにあることは知っていた。知っていたうえで、野菜炒めにも少量だったとしても豚肉は入っているに違いないと思い込んでしまっていた。七面鳥の野菜炒めには肉は一切入っていない。注文時には注意していただきたい。

七面鳥という雰囲気の中で食べる野菜炒めは悪くなかった。とにかくこれで高円寺の七面鳥へ訪問したいという願いが叶った。まずはその満足感に酔いしれよう。

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作者:馬場飯