カレー南蛮(カレーそば) - 東京立ち食いそば

カレー南蛮とは長ネギが具のカレーそばのことである。

松のや カレーそば

カレー南蛮とカレーうどんは麺で区別される。麺が蕎麦の場合はカレー南蛮で、うどんの場合はカレーうどんだ。しかし、両者の区別は曖昧になってきている。麺が蕎麦ではなくうどんでもカレー南蛮と呼ぶことがあり、麺がうどんで長ネギを使ったものをカレー南蛮、タマネギを使ったものをカレーうどんとして区別することもある。

カレー南蛮の「南蛮」とは長ネギのことである。大阪の難波がネギ(長ネギ)の産地だったため、「難波」が転じて「南蛮」になったとする説が有力らしいが、その一方で「南蛮」は「難波」ではなく「南蛮煮」に由来するという見解もある。カレー南蛮の「南蛮」が「難波」「南蛮煮」のいずれに由来するにせよ、「南蛮」がネギ(長ネギ)を指すことに変わりはない。

現在のカレー南蛮とは、カレーそばだったり、カレーうどんだったり、具が長ネギだったり、タマネギだったりする、そういった曖昧模糊としたものだったりする。それらを一括にしてカレー南蛮と呼んでいるのだ。

2020年1月に立ち食いそばチェーン店でカレー南蛮を食べようと思い立った。

そして、気づいた。どこにもカレー南蛮がないのだ。どの店でもカレー南蛮が販売されていなかった。富士そばゆで太郎小諸そばの三大チェーン店でカレー南蛮は販売されていなかった。嵯峨谷でも販売されていない。吉そばいわもとQではカレーライスさえ販売されていなかった。

立ち食いそばチェーン店でカレー南蛮を食べることができない今、牛丼チェーン店松屋グループのとんかつ専門店松のやに良くも悪くも注目したい。松のやはとんかつ専門店であるものの、関東の店舗ではそば、関西の店舗ではうどんを販売しており、かけそば・かけうどんならば290円で提供している。立ち食いそばチェーン店を脅かす価格設定である。

そして、松のやのそば・うどんメニューのなかには、カレーそば・カレーうどんがあるのだ。驚くべきは価格だ。かけそば・かけうどんと同価格の290円である。松のやのカレーそばは、そばは生そば、つゆは少々スパイシーなスープカレーで、具は青ネギだった。率直に言えば、立ち食いそばチェーン店を凌駕する価格設定であり、普通に味も美味い。経営規模が巨大な牛丼チェーン店が200円台でそばの販売を開始したのだ。そばは普通に生そばだ。カレーは牛丼チェーン店のなかで最もカレーの評判が良い松屋の製造するカレーだ。立ち食いそばチェーン店が簡単に太刀打ちできる相手ではない。

誰も騒いでいないが、松のやだけは気づいていそうだ。松のやは、とんかつ専門店の顔をしつつ、実はそば・うどん販売で市場を席巻できる実力を既に兼ね備えている松そばの試みは、きっとこの延長線上にあるのだろう。

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作者:馬場飯